ちいさなヒッポ

  『ちいさなヒッポ』

マーシャ=ブラウン 作
内田莉莎子 訳
出版社 偕成社
発行年月 1984年1月
原書初版 1969年
定価 1,320円
(本体1,200円+税)


お母さんのそばにいれば怖いものなしだった、かばの子ヒッポ。
そんなヒッポにも、かばのことばを覚えるときがきました。
ヒッポはお母さんに教わった大事なことばを、何度も何度も練習しました。

ある日のこと、
お母さんのそばを離れたヒッポのもとへ、大きなワニが滑り寄ってきて……

* * * * * 

『三びきのやぎのがらがらどん』や『ちいさなメリーゴーランド』などでおなじみのマーシャ・ブラウンさん。
本書の作者紹介には、ニューヨーク市立図書館にお勤めだったときのおはなし会がきっかけで、絵本を描きはじめられたとありました。

さまざまな技法で絵本を制作され、作品によっては、がらりと異なる作風に驚かされますが、『ちいさなヒッポ』もまた、著者の『あおいジャッカル』や『もとはねずみ…』などと同じ、美しい木版画の絵本です。
木版画の木目を生かして水輪を表現していたり、空の様子を区別していたりと、見れば見るほど惚れ惚れとしてしまいます。

個人的には、ヒッポがおくちを目一杯開けて、教えてもらったばかりのことば「グァオ!」を言ってまわるところが好きです。
なかでも、仲間の小さなかばと「グァオ!」と言い合っているところがいいなあと思うのですが、ちょうどそのそばを通っている大きなかば(もしかすると、その小さなかばのお母さん?)の表情が、まさに人間の大人が、通りすがりに子どもたちのやりとりを微笑ましく見ているそれと同じで、思わずこちらまでにっこりしてしまいます。

親子の姿を描きながら、物語の舞台であるアフリカの壮大さや、かばの暮らし、その生態などが分かるのも、この本の魅力です。