おじいちゃんのコート

『おじいちゃんのコート』

ジム・エイルズワース 作
バーバラ・マクリントック 訳
福本友美子 訳
出版社 ほるぷ出版
発行年月日 2015年10月25日
定価 本体1,600円+税


おじいちゃんが若いころ、
自分の結婚式のために仕立てたコート。

おじいちゃんは、そのコートをどこへ行くにも何をするにも着て、
やがてコートはぼろぼろに。

そこでおじいちゃんは、コートを上着に仕立て直しました。

ところが、その上着もやがてぼろぼろになり、
ベストに、ネクタイに……と、その度に仕立て直し、
どんどん小さくなっていきました。

とうとう最後には……?

* * * * *

このおはなしは、イディッシュ語の民謡「ぼくはすてきなコートをもっていた」(“Hob Ikh Mir a Mantl”)をもとにしたおはなしだと、巻末に書かれていました。
イディッシュ語というのは、中欧・東欧のユダヤ人の間で話されていたドイツ語に近い言語で、ユダヤ語とも言われます。

このおはなしを読んで、似たおはなしの『おじいさんならできる』(福音館書店刊)を思い浮かべましたが、この巻末を読んで納得。
そういえば、『おじいちゃんのもうふ』(光村教育図書刊)も、『ヨセフのだいじなコート』(フレーベル館刊)も、同じような内容のおはなしで、どうやらすべて、イデッシュ(ユダヤ)の民謡や昔話をもとに描かれているよう。

もともとはユダヤ人のおはなしだったものが、アメリカに伝わり、こうしていろいろな絵本となって親しまれているのは興味深いです。

「ものを大切にする」ということ。それは、いろいろなかたちがあると思います。
例えば、最初のきれいなままの状態で保管する、というのもひとつですし、あるいは、くたびれるまで長く愛着をもって使う、というのも、ものを大切にするということでしょう。

そして、このおはなしで描かれているのは、別の新しいものにかたちを変えながら大切にする、ということ。

そのためには、おはなしの中のおじいちゃんのように工夫が必要ですが、絵本からは、それを楽しんでいることがよく伝わってきて、こちらまでなんだかうれしい気持ちになります。
そうそう、表紙の若かりし頃のおじいちゃんも、なんとも言えず楽しい。

『ないしょのおともだち』(ほるぷ出版刊)でお馴染み、バーバラ・マクリントックさんの絵も、細やかで見ごたえたっぷり。

このおはなしを語っているのが誰なのか、そして誰に語っているのか、というところにも、思わずほっこりしてしまいます。