万次郎さんとおにぎり

『万次郎さんとおにぎり』

文 本田いづみ
絵 北村人
出版社 福音館書店
発行年月日 2018年9月20日
本体価格 900円+税
※「こどものとも年少版」2012年10月号


秋になり、万次郎さんの田んぼでは、お米がたくさんできました。
そのお米でおにぎりを作った万次郎さんでしたが、
おにぎりにのりを巻いていた途中に、のりが足りなくなってしまいます。

そこで、万次郎さんが戸棚を探していたそのとき。
待ちきれなくなったおにぎりたちは、なんと表へ飛び出していってしまいます。

「まてえ、まってくれえ。わしの おにぎり やあい」

万次郎さんが、そのあとを走って追いかけると……?

* * * * *


2012年の秋に、月刊絵本「こどものとも年少版」で発売され、その後品切れに。
いつか当店のお客さまにもご紹介できる日が来たらいいな、と心待ちにしていたので、この度とうとう単行本化が決まり、入荷を楽しみに待っていました。

四国の方言で語られる昔話風のおはなしは、ゆかいで、軽快で、なんとも気持ちが良くて。秋晴れのような朗らかさが、胸いっぱいに広がります。

万次郎さんが、「のり、のりは なかったかのう」と、難しい顔をして(けれどゆかいなポーズで)のりを探すところとか、
まだのりを巻いていなかったおにぎりが、「いやじゃ、いやじゃ、はだかは いやじゃ」と言って、のりの切れ端をくっつけるところなんて、
なんてかわいいんだろう!と、思います。

手をかけて育てた作物が実り、おいしく食べられること。
自分たちが立派な姿に成長して、堂々とおてんとさまに胸を張れること。

万次郎さんやおにぎりたちの、その喜びが手に取るように伝わってきて、こちらまでうれしい気持ちになりました。