『ベンジーのふねのたび』 作・絵 マーガレット・ブロイ・グレアム 訳 渡辺茂男 出版社 福音館書店 発行年月日 1980年4月20日 ※原書『BENJY'S BOAT TRIP』1977年 価格 ¥1,200+税 ある夏のこと。 家族が船の旅に行くことになって、犬のベンジーはメアリおばさんとお留守番することになりました。 ところが、メアリおばさんとの散歩の途中、ベンジーは家族を探して港に着いていた船に乗り込んでしまいます。ベンジーはあちこち探しますが、家族は見つかりません。それもそのはず、その船は違う船だったのです。 おまけに、船にはジンジャーという気の強い猫がいて・・・。 * * * * * 毎年夏になると、田舎へ行ったり、湖へ行ったりと、いつも家族といっしょだったベンジー。絵を見る限り、これまでは車の旅で、だからベンジーがいっしょでも問題なかったのだと分かります。助手席の窓から顔を出すベンジーは、とっても嬉しそう。(ベンジーが顔を出しているのが右側なのは、左ハンドルだからですね。) ところが今回は船の旅。おいてけぼりをくらってしまったベンジーは、自ら船に乗り込むという思い切った行動に出ます。結果、船は間違えてしまった訳ですが、なんだかんだ楽しそうで、船ってやっぱりいいなあと思います。見渡す限りの海も、青い空に映える白いかもめも。日常から離れ、ゆったりとした時間が流れるようです。 そうそう、ベンジーは船旅の途中、船長さんの部屋にもコックさんの部屋にも入りますが、どちらの部屋にも写真が飾ってありました。いずれも、女の人が子どもを抱えている写真です。きっと奥さんと子どもの写真でしょう。船長さんの部屋にもう1枚あるのは、船長さんのお母さんでしょうか、思わずほっこりしてしまいます。そんな彼らの背景を、ああかな、こうかなと想像するのもまた、絵本の楽しみです。 さやわかで、あたたかくて、最後はにっこり。気持ちのよい夏のおはなしです。