ビロードうさぎ
『ビロードうさぎ』
文 マージェリィ・ウィリアムズ
絵 ウィリアム・ニコルソン
訳 いしいももこ
出版社 童話館出版
発行年月日 2002年3月15日
※原題『The Velveteen Rabbit』1922年発行
あるクリスマスの朝、ぼうやのもとに、たくさんのおもちゃやお菓子が届きました。ビロードできたうさぎも、その中のひとつでした。
けれど、長い間、うさぎは子ども部屋のおもちゃ箱の中に入れられたまま、おきざりにされていました。
ある晩のこと。ぼうやがいつもいっしょに寝ているおもちゃが見つからず、うさぎは突然、ぼうやのベッドで眠ることになりました。その日から、ぼうやとうさぎは、毎晩いっしょに眠るようになりました。眠るときだけでなく、ぼうやの行くところなら、どこへでもいっしょに行きました。
ところが、ある日、ぼうやはひどい病気になりました。そしてお医者さんは、言いました。“子ども部屋は消毒しなければならない、ぼうやがさわった本やおもちゃは、みんな焼いてしまわなければならない”と
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子ども部屋で出会った木馬の話を聞いてから、“ほんとうのうさぎ”になりたいと思い続けてきたうさぎ。
「おもちゃじゃないんだ。ほんとうのうさぎなんだよ」そう言ったぼうやの言葉で、うさぎは“ほんもののうさぎ”になりました。なったと信じていました。けれど、そんなうさぎにも、“ほんもののうさぎ”を、知るときがやってきます
小さな子どもたちにたくさんのおもちゃは必要ないと、この本を読むと改めて思います。それよりも、こうして大切に思える、かけがえのない“ほんもの”が必要なのだと。子どもたちには、こんなおもちゃに出会ってほしい。そして私たちは、ぼうやのような子どもたちの気持ちに、少しでも寄り添ることができるといいなと思います。