おててがでたよ
『おててがでたよ』
作 林明子
出版社 福音館書店
発行日 1986年6月20日
価格 ¥700+税
“あれ あれ あれ
なんにも みえない
おてては どこかな”
すると服の中から、ぱっと小さなおててが出てきました。
その次は頭が出て、お顔が出て、もうひとつのおてても出て・・・
林明子さんの、「くつくつあるけのほん」シリーズの1冊です。
* * * * * * *
裏表紙を見れば明らかなのだけれど、どうやらこのお洋服はとても大きい。
お父さんかお母さんのTシャツか、はたまたお兄ちゃんかお姉ちゃんのTシャツか・・・真相は分からないけれど、私の勝手な憶測では、引出しから引っ張り出したか、はたまた取り入れたばかりの洗濯物から見つけ出したのではないかと思う。
そんな大きすぎる服の袖や襟ぐりから、ぽってりとした手や足が出てくる様子は、本当に愛らしい。
顔と両手と片足が出て、でももう片方の足がなかなか出てこないところでは泣き出しそうな顔になるけれど、「うーん うーん」としかめっ面で踏ん張り、「すぽん」と足が出ると、満面の笑みになってとても嬉しそう。
こんな風に、子どもが何かに奮闘する姿は、世のお母さん、お父さんにとっては日常のありふれた光景かもしれません。けれど、実は子どものそばにいる大人だけが味わえる幸せな時間で、特別なもの。
そんな時間を切り取って、愛らしい絵とあたたかな言葉で表現された、とても幸せな1冊です。