くいしんぼうのはなこさん

『くいしんぼうのはなこさん』

文 石井桃子
絵 中谷千代子
出版社 福音館書店
発行日 1965825

pieni silta

あるお百姓さんの家に生まれた牛のはなこは、とてもわがまま。あれがいやそれはいやと言ってごちそうばかり食べていたので、すっかり大きくなってしまいました。おまけに他の牛たちの食べものまで欲張って食べるものだから、ある日のこと、とうとうお腹いっぱいにガスがつまってしまい、なんといつもの3倍くらいにふくらんでしまいました。果たしてはなこはどうなるのでしょうか――。

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“食べ過ぎたり友だちに威張ったりしたらいけないよ”絵本からすぐに意味を感じ取ろうとすると、そんな教訓話としてこの絵本を読みとりがちです。私自身、ついつい絵本の中に意味を探してしまいがちなのですが、そうすると肝心なおもしろさを見逃してしまうこともあって、それはすごくもったいないことだなぁとつくづく思います。この絵本もまさにそうで、まっさらな心で楽しみたい1冊。すっかり女王さま気分のはなこが「みんな ちょっと おまち!」と言うところや、ガスがたまってアドバルーンのようにパンパンにふくらんでしまうところなんて本当に楽しいし、朗らかでゆかいなストーリーに、明るい色使いのやわらかな絵がぴったりだし、絵の構図もすごく良いし・・・どこをとっても魅力的です。

この絵本が50年近くも子どもたちに愛されている理由は、単純な教訓なんかではなくて、そんなところにあるように私は思います。