小さなきかんしゃ
『小さなきかんしゃ』
作 グレアム・グリーン
絵 エドワード・アーディゾー二
訳 阿川弘之
出版社 文化出版局
発行年月日 1975年11月20日
価格 ¥1,000+税
ちびの機関車は、のどかな、ある小さな村で生まれました。
ちびは生まれてから、その村の駅と、隣町の駅しか知りませんでした。その間の、支線の上だけを、毎日、行ったり来たりしていました。そして、そんな毎日が、ときどき、退屈で退屈で、たまらなくなることがありました。
そしてある朝のこと、機関士のおじさんが寝ている間に、ひとりで機関庫を飛び出しました
* * * * * * *
ちびが生まれた村の名前は、“リトル・スノーリング”。小さないびき、という意味だそうです。そして隣町の名前は、“マッチ・スノーリング”。大いびき、という意味の町でした。
名前を聞いても、その村や町が、どれだけのどかなところなのか、なんとなく分かりますね。きっと平和な毎日だったのだろうけれど、それを退屈でたまらなくなるちびの気持ちも、分からなくはありません。だってちびは、外の世界を見たことがないのだから。そう、外へ出てはじめて、元居た場所の大切さに気が付いたりして。
作者のグレアム・グリーンさんは、イギリスの小説家。本書は、彼がはじめて子ども向けに書かれた作品だそう。アーディゾー二さんの作品は、これまで何度もご紹介してきましたが、同じイギリスで活躍され、「ケイト・グリーナウェイ賞」の最初の受賞者でもあります。
そして、訳者は、『きかんしゃやえもん』の阿川さんです。阿川さん、広島のお生まれなのですね。わたしは広島弁に詳しくないので、それが関係あるのかどうか分かりませんが、ときどき出てくる話し言葉は「やっちゃろか、やめとこか」、「心配するなて。おまや、ほんまにゆうかんなちびすけじゃ」・・・といった風で、よい味わいがあります。
最後のちびのセリフも、とってもかわいいです。