セロひきのゴーシュ
『セロひきのゴーシュ』
作 宮沢賢治
画 茂田井武
出版社 福音館書店
発行年月日 1966年4月1日
価格 ¥1,100円+税
“ゴーシュは町の活動写真館でセロをひくかかりでした。”(冒頭より)
けれどゴーシュは、
仲間の中では1番へただったので、
いつも楽長にいじめられていました。
町の音楽会まで、あと10日。
家へ帰っても、夜中をすぎても、
ゴーシュは練習を続けました。
そこへ、1匹の三毛ねこがやってきて、
ゴーシュの音楽を聞かないと眠れないから、
セロを弾いてほしいと頼みました。
その翌晩はかっこう鳥が、
さらにその翌晩はたぬきが、
そしてさらにその翌晩には野ねずみの親子が、
ゴーシュのもとを訪ねてきました。
その度に動物たちはいろいろな理由を付け、
ゴーシュのセロを聞きたがり・・・。
* * * * * * *
はじまりにある「活動写真館」とは、今でいう映画館のことだそう。セロというのは、チェロのことです。
動物たちの訪問によってゴーシュはセロと向き合い、少しずつ変わっていきます。セロの腕前だけでなくて、ゴーシュ自身も・・・。
本書のあとがきには、瀬田貞二さんのあとがきが添えられていて、この作品が宮沢賢治さんが31歳のときに手掛けられた作品だと思われることや、宮沢賢治さんと茂田井武さんに似通う点があること、そうしたお二人によって完成したこの作品の魅力などが綴られています。
茂田井さんの絵には、独特の力強さと、心地良いあたたかさがあって、たしかにこのおはなしにぴったりです。挿し絵によっては、該当する文章よりも後(例えば次のページなど)に絵が挿入されている箇所がありますが、これがかえってハッとさせられるというか、絵が強調されるような感じがして、おもしろいです。
挿し絵はすべてカラー。漢字表記がありますが、漢数字を含め、ルビがふってあります。