マシューのゆめ

『マシューのゆめ
えかきになったねずみのはなし』

作 レオ=レオニ
訳 谷川俊太郎
出版社 好学社
発行年 1992年
※原題『MATHEW’S DREAM』1991年(アメリカ)
価格 ¥1,456+税


ねずみのマシューは、
お父さんとお母さんといっしょに暮らしていました。

一家は貧しかったけれど、
両親はマシューの将来を夢見て、
大きな望みをかけていました。

ある日のこと、
マシューはクラスのみんなと
生まれてはじめて美術館へ行きました。

そこでたくさんの絵画に触れたマシューは、
こう思います。

“ここには せかいが まるごと ある”と・・・。

* * * * * * *

以前ご紹介した『おんがくねずみジェラルディン』と本書、二冊の絵本に共通していることは、“音楽と絵画の誕生の瞬間を描こうとしているところ”だと、訳者の谷川俊太郎さんは、本書の袖のところで綴られています。

“誕生の瞬間”  。それは、谷川さんの言葉で言い換えると、“それまで気づかなかった新しい世界に、子どもが初めて目覚める”とき。

音楽や絵画にとどまらず、子どもたちの世界ではあらゆる方面で、そんな瞬間がうまれているのだと思います。大人はそれを、しばしば見逃してしまいがちだけど。

それでも目を見張って、子どもたちのそんな瞬間を大切にしてあげたいと思います。目覚めたこころが、もっときらきらと輝けるように。

「ぼく、えかきに なる!」そう言って、両親のもとへかけて行ったマシュー。うれしそうな顔が、とてもかわいいです。
両親の思いとは違ったかもしれないけれど、マシューの顔を見たら、このページにいろいろな背景が詰まっているように思いました。