だいくとおにろく

『だいくとおにろく』

再話 松居直
画 赤羽末吉
出版社 福音館書店
発行日 1967年2月15日
※月刊「こどものとも」1962年6月1日発行
価格 ¥800+税


むかし あるところに、とても ながれの はやい
おおきな かわが あった。”(本文より) 

誰も、その川に橋をかけることができなくて、
村の人たちは、このあたりで1番名高い大工に、
橋をかけてほしいと頼みました。

ところがその大工、二つ返事で引き受けたはいいものの、
あとから心配になってしまいます。

すると、川の中から大きな鬼が現れました。

鬼は大工に、目玉をくれるなら、
代わりに橋をかけてやってもいいと言います。
そして実際、ほんの数日で橋を作ってしまったのです。
(それも、立派な橋でした!)

困った大工に、鬼は、
「おれの なまえを あてれば ゆるしてやっても ええぞ」と言いました  

* * * * * * *

鬼は、とってもたくましい風貌をしています。
それなのに、名前を当てるだけ?それだけでいいの?と、
最初にこのお話を読んだときは、少し引っかかるものがありました。

けれど、よくよく考えてみると、「いっすんぼうし」や「ももたろう」など、
鬼が出てくる昔話はたくさんあっても、
鬼に名前が付けられていることは少ないような気がします。
(もとを辿っていくと、こういう名前だった、という説もあるようですが・・・)

そう思うと、この鬼に「おにろく」という名前が付けられているのは、
つまりは、“名前”という魂を吹き込まれているような、そんな感じがして。

その意味が分かると、すとんと腑に落ちたように思いました。

おはなしの軽快さだったり、言葉の楽しい言い回しだったり、
白黒とカラーと交互に展開される見開きの、絵の美しさだったり・・・
たくさんの魅力が詰まった1冊です。