もりのてがみ
『もりのてがみ』
作 片山令子
絵 片山健
出版社 福音館書店
発行日 2006年11月10日
※月刊「こどものとも」1990年3月1日発行
価格 ¥800+税
寒い寒い、冬のこと。
ひろこさんは、りすに手紙を書きました。
“もりに すみれが さいたら手紙の終わりには、こう添えて。
もみのきのしたで まっています。”
そして、森の真ん中にある大きなもみの木に、
その手紙をさげておきました。
別の日にはとかげに、それからことりや野うさぎに、
手紙を書くたび森へ行っては、大きなもみの木にさげておきました。
最後には、そんなもみの木にも手紙を書いた、ひろこさん。
そうして、森はすっかり雪景色に・・・。
日は過ぎ、ようやく雪が溶け、森にすみれの咲くころになりました。
ひろこさんは、急いであのもみの木のもとへ走っていきました
* * * * * * *
私は、片山令子さんのおはなしが好きです。
夫である片山健さんの絵の『たのしいふゆごもり』や『おつきさまこっちむいて』(いずれも福音館書店刊)もそうですし、ましませつこさんの絵の『もりのセーター』(PHP研究所)もそう。
手に届くところにある豊かな自然だったり、日常から垣間見える美しい景色だったり・・・おはなしの中で当たり前のように描かれているものは、実は私たちが普段見過ごしている、とても大切なものだったりします。
この絵本からは、ひろこさん(「さん」付けですが、おかっぱ頭の小さな女の子です)が春を心待ちにしている様子が、手に取るように伝わってきます。
彼女が動物たちにあてた手紙からも、それはひしひしと読み取れます。そしてこの手紙がまた、本当にかわいくて・・・!
手紙の周りには、くるみやら絆創膏やらが散らばっていて、手紙に入れたのかな?なんて、想像をめぐらせてみたり。
春を待つ時間も、いとおしく思えるような1冊です。