十二支のはじまり
『十二支のはじまり』
文 岩崎京子
絵 二俣英五郎
出版社 教育画劇
発行日 1997年11月10日
価格 ¥1,200+税
むかし、ある年の暮れのこと。
神さまは動物たちに、おふれを出しました。
“しょうがつの あさ、ごてんに くるように。ところがその日にちを忘れてしまった、ねこ。
きたものから 十二ばんまで じゅんばんに 一ねんずつ、
その としの たいしょうに する”
ねこに何日だったかと聞かれたねずみは、1月2日だと、わざと間違った日にちを教えました。
そして大晦日の夜、まずはうしが1番に出発しました。
その背中に乗って、御殿へと向かったねずみ。(ところが、最後にちゃっかり飛び込んで1番に!)
そのあとを、とらが、そしてうさぎが・・・と、次から次へと、動物たちが御殿の門をくぐりました。
さて、そんなことはつゆ知らず、翌日になって御殿へ出かけたねこでしたが・・・?
* * * * * * *
十二支のはじまりを描いた絵本はいくつかあって、それぞれに魅力があります。
けれど、もしも子どもたちが最初に手に取るとしたら、どの本がいいかな・・・。
そう考えた時、1番に浮かんだのがこの絵本でした。
日本の昔話を多く手掛ける岩崎京子さんの文章は分かりやすく、繰り返される「~だと。」の語り口調が、なんとも風情があっていいなあと思います。
絵は、『とりかえっこ』(ポプラ社刊)や『こぎつねコンとこだぬきポン』(童心社刊)の、二俣英五郎さん。二俣さんの絵は、やさしくて、ていねいで、包み込んでくれるような心地よさがあります。
文章をさえぎらず、お話の流れを大切にしてくれる。そんな点でも、昔話や民話にはぴったり。
個人的には、長谷川摂子さんと山口マオさんの『十二支のはじまり』(岩波書店刊)もおすすめ。こちらは、版画の絵が味わい深く、方言の語り口調が楽しい1冊です。
ちなみに・・・
昔話や民話を絵本にすることには、いろいろな意見があります。
もともとが語り継がれているものだから、絵にすることへの批判もあります。でも、たとえ昔話の本質がわずかに失われようとも、語り継がれなくなってしまうよりは、絵本という形で子どもたちに伝えていけたらと、私は思います。
そのためには、画風だけでなく、絵の構図や展開、お話の中のどのシーンを絵にしているかなども大切にしながら、みなさまにご紹介できればと思っています。